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ミリタリー | 趣味・実用 | 感想 2015.08.01 (土)

イエルク・ムート『コマンド・カルチャー 米独将校教育の比較文化史』大木毅訳、中央公論新社、2014年。

第二次大戦におけるアメリカ軍とドイツ軍の比較研究として、クレフェルトのFighting Power: German and U.S. Army Performance, 1939-1945 (Contributions in Military Studies)という古典的な本がありますが、本書は19世紀後半から第二次大戦までの米独将校教育の比較研究です。


ムートは、アメリカとドイツの将校教育の違いを鮮明に描き出しています。

アメリカの陸軍士官学校に入ると、上級生からはげしい"しごき"を受ける。例としては、担架から吊り下げられ、それから20分間シャワーを浴びることを強いられる(マッカーサーの回想)。授業では、暗記、とくに数学や物理学の科目が重要視された。このため人格は十分なのに数学や物理学の点が足りないことから落第させられることが起きた。戦術問題では、教官の回答に合うよう答えなければならない。

このような現象に対しムートは、
リーダーシップは、常に技術的な技能に打ち勝つ」(78頁)
規律の維持に必要なのは、何よりもリーダーシップであって、服務規程ではない。前者は、ただ模範を示すことによってのみ得られる」(83頁)
将校はドクトリンと用意された解答を切望し、指揮するよりも『運営』しようとしたのだ」(259頁)
と批判しています。

一方のドイツの学校では、
「若者は『子供以下』の扱いなどされず、『お前』ではなく敬称の『貴君』で呼びかけられる」(129頁)、「上長に模範を示され、生徒たちはすでに、義務と戦友精神のバランスを取って、正しく歩むことを学んでいた」(129頁)。陸軍幼年学校では、新入生一人につき指導係の上級生が付けられ、上級生たちは学校の規則と規律を教え、新入生をいじめから守った。ドイツでは、"いじめ"や"しごき"ではなく、模範を示す、率先垂範することが重要視された。
アメリカでは一昔前の兵器を使って訓練していたが、ドイツでは最新式の兵器を使ってあるいは想定して訓練していた。陸軍大学校では、戦術と軍事史に多く時間が割かれていた。
戦術問題では、出題される問題にこれという答えはない。教官の案はあくまで一つの案として理解されている。

もちろん、戦略次元で二度も失敗したドイツの過ちの理由も記されていますが、それは本書を読んでということで。


個人的に、もっとも驚いたのは「ドクトリン」という言葉が悪い意味で使われていることです。英語圏の研究では「ドクトリンとドグマ」を対比させてドクトリンを称賛したりしています。しかしながら著者ムートは、ドイツ軍ではドクトリンという単語はほとんど使われなかったと言い、ドクトリンという人工的なガイドラインよりも臨機応変の対応を重視していたと言っています(229頁)。


さいごに――。

「現在のテロに対する戦争で、合衆国陸軍が保有し得る、もっとも鋭利で破壊力がある武器は、新型のコンピュータ・システムや高度に発達した無人機、スマート砲弾ではない。細心の注意を払って選抜され、軍事史の知識を大量に叩き込まれ、攻撃精神にみちみちた筋金入りの大隊長や旅団長が、独自の作戦を遂行できるぐらい情感に信頼され、たとえ銃弾が飛んでくるようなところであろうとも、自ら作戦実施を監督する。それこそが、合衆国陸軍最強の武器なのだ。」(280頁)

自衛隊ではどうなのでしょうか?






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