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戦術 2009.03.11 (水)
高屋庸彦『数線陣地の攻防』より、付録第4「欧州戦争前における仏軍の数線防御戦術」



本編は1912年2月5日、ミュンヘンにおける将校講話会においてバイエルン参謀部派遣将校の某中尉が『近時のフランス軍戦術』と題した講話を高屋少佐が抜粋訳したものです。訳文は軍隊調ですが、転載するにあたり講演調に改めました。



防御に関するフランス軍戦術の趨勢は著しく攻勢的な意味を加えるようになりました。すなわち「防御は敗因を招くものであり、ただ絶対的攻勢防御において始めて効果をあげることができる」と。

この言は各種軍事教育者によって徹底的にフランス軍に取り入れられ、同国操典もまた「防御においても、攻撃に出るときのように火戦は突撃運動支援のための一手段に過ぎない」と極言しています。すなわちフランス軍の最近の戦闘方式では防御はただ攻勢防御を指すものであり、純粋な防御、たとえば局地の領有を目的とするものやなるべく決戦を延期し時間の余裕を得ようとする戦術目的の達成にあっても単に拒止のみをするのは、いまや救援なき死滅に等しいものだと主張しております。

フランス軍防御陣地には前進支隊による偽陣地があります。前進支隊は敵に不意の展開を強要し、これを不利な方向に誘導し、攻者の接近に伴いその方向や兵力を目的としています。この任務を達成するためには、支隊は戦闘を交えなければなりません。この戦闘は偵察を有利にし、敵の行動を躊躇させるでしょう。しかし軍隊が大きくなるにおよんでは効果は小さくなります。けだし、大兵団において一軍の全陣地を欺瞞することは、独立師団の陣地を秘匿することに比べてますます困難であります。そしてフランス人はこれらの支隊が敵に対して攻撃を実施したのちに再びこれを収容できると信じています。

フランス軍本陣地の形式は、我々の防御陣地に比べまったく別のものであります。すなわち我々は横方向の展開を推奨し、その地区予備は前線の補充に使用し、その他の縦長区分(総予備はのぞきます)もまた漸次前線の中で保持しなければならない地点に向かい注入されるのを目的としています。しかしながらフランス軍はこれに反し、縦長における各種地点と多数の線中において攻勢的戦闘を実行するために縦長区分を設けるものとしています。
(転記者注:第一次大戦前、単線陣地とするか数線陣地とするかは各国でもめていた。ドイツ軍は一線陣地。フランス軍は数線陣地である。大戦が始まってみると数線陣地に軍配が上がる。数線陣地は陣地帯となり、陣地帯は数線陣地帯となっていく)

フランス軍防御戦術図1

挿図はフランス軍陣地占領の状態を示します。

挿図中、前衛線は我が軍の前進陣地の線と考えることができます。概して寡少な兵力をもって占領し、攻撃を受けるや退却します。この前衛線前になお前進支隊がありますが、その任務は異なるものであります。

主陣地の第一線には、単に大隊により占領された若干の支撐点を有し、占領していない地域は火力をもって掃射できるよう設備します。支撐点としては村落、森林などを選定します(100メートル弱の高さをもつ高地前の低地内にある村落などはとくに好んで採用されます。たとえば挿図中のAのように)。

第一線支撐点の後方には、師団砲兵の大部分を配置します。支撐点列の後方、第二線は第一線支撐点と同様に配置します。師団はその歩兵の半分(第1旅団)を防御陣地占領に用い、第2旅団は師団長の手裡に存する地域予備として師団地区の中央後に位置させ、軍陣地の後方には軍司令官の予備を置きます(挿図中の3D.4D.)。

フランス軍は軍隊の使用に関し、次のように想定しています。

敵は第一線支撐点に対し前進し、各支撐点の中間地域が占領されていないのと見てそれら支撐点を包囲せんと企図するであろう(ドイツ軍は包囲の企図心に富むのでとくにそうです)。そのとき各支撐点は図のような関係となるであろう。

フランス軍防御戦術図2

この瞬間において各地区予備は包囲者の側翼を包囲し、逆襲を実施します。そして、この逆襲は支撐点守備隊の巧妙なる火器の使用と相まって敵を撃退し、支撐点の奪取を困難にさせるにいたるのであります。ここにおいて攻者は再び隊伍を整頓し、この攻撃を繰り返さなければなりません。

もし第一線において逆襲奏功せず、敵兵第二線に噴出して来るときは、フランス軍は第二線において同一の動作を演出し、大なる地区予備をもって逆襲に転じます。この間、フランス軍の前線における支撐点の守兵は閉鎖された堡塁のように戦闘すべきものとされ、小なる地区予備がことごとく撃退されたときでも依然その位置を固守し、第二線に向かってする大逆襲により敵の攻撃を撃退し、始めて前線支撐点内に封鎖された守兵はようやく救出されると銘記すべしとしています。


フランス軍操典は次のように論じています。「敵の攻撃を拒止するためにもっとも必要不可欠なことは、防御軍隊が迅速に後方に集結し峻烈な攻撃を開始することにあり」と。これによって観てみますに、逆襲で効果を上げない場合には時として陣地守備兵をも撤退させて後方に集結した後、陣地に侵入した敵に対して、いわゆる回復攻撃をするようです。

すなわち、我々はつねに回復攻撃を予期しておかなければなりません。フランス軍は一部の兵力をもってその陣地周囲において実施し、なお戦闘を効果的にさせるためまったく新鋭にしていまだ使用されていない強大な兵力を有しています。(転記者注:意味が取れない。要コメント欄参照)

いやしくも回復攻撃の思想は防御において戦勝を獲得しようとする根本思想の進化であります。けだし、予備として単に前線の補充に使用され全力をもって前線を保持するようにすれば、防者は攻者を食い止める目的を達成できます。しかしこれをもって防者の勝利とすることはできません。ただ回復攻撃によって達成されたのならば、攻者は算を乱して退却し、そして防者の絶え間のない追撃によることで始めて戦闘勝利ということになるからです。

これまで述べてきましたようにフランス軍は各種の防御戦闘法を持っていますが、積極的に消極的に前線を維持するか、あるいは直ちに撤退すべきか、あるいは第一もしくは第二線に対し回復攻撃をするべきかなどは、時と状況により決定します。ただこの種の防御法において疑問に思いますのは、前線陣地の撤退を誰が命令すべきかの問題です。

大会戦においてこれを各師団に一任すれば、軍の正面は各所において破綻を生じ、前線を長く持たせようとする師団に対し敵の包囲攻撃を可能にさせてしまいます。またもし統一的にこれを施行しようとしても、甚だ錯綜した戦場に応じてこれを適確に行うことはかなり困難でしょう。

この事実によって述べますに、我々はフランス軍の防御戦術を甚だしく恐れるということはないでしょうが、攻者は対抗する防者がたとえその陣地を放棄することがあってもまだ最後の勝利を得たというわけではないことを肝に銘じ、その後の行動を適切に行うことに注意しなければなりません。



2010/09/29、図の関係で削除していた部分を加筆。青字。
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