ガリポリ 2010.07.18 (日)
今週の本棚:山内昌之・評 『トルコ狂乱』=トゥルグット・オザクマン著
前一回消えてたような…?



「これを要するに、ガリポリ半島に対する連合軍の上陸作戦は、幾多の苦難と多大の犠牲とをもってして、ついに失敗に帰せり。今その主要なる原因を再びここに総録し、もって将来に資するとともに、本書の結論に替えんとす。

1.イギリスの平時準備は不十分にして、かくのごとき作戦を指導するに十分ならざりしこと。
2.作戦開始前にこれを成功せしむるに必要なる手段をあらかじめ深く考究せられざりしこと。
3.一般にオスマン軍を軽視し、その抵抗を排除して行う上陸ならび爾後の前進は、迅速かつ易々たるべしとの楽観的仮定の下に、諸計画および準備をなしたること。
3.オスマン軍の将帥および軍隊は比較的精鋭なりしに反し、連合軍の統帥部は決断的才能を欠き、その指揮法拙劣、軍隊また訓練不十分なる諸隊の集成にして、かつその編成適切を欠き、ことに砲兵兵力不十分なりしこと。
4.艦砲射撃の威力は期待に伴わなざりしこと。
5.十分なる砲火の準備なくしてしばしば正面攻撃を行いしも、なんら利益を得ることなく、単に不必要なる生命の損失を招きたるに過ぎざりしこと。
6.終始十分なる砲兵と所要の弾薬および軍需品の補給不可能なりしこと。また十分なる補充隊および増援隊を準備し、原編制を一定兵力に維持する能わざりしなどのため、作戦はつねにその進捗を妨げられたること。
7.糧秣の補給は間然するところなかりしも、給水不十分なりしため、著しく軍隊の戦闘力を減殺せしこと。」
田尻昌次『千九百十五年 ガリポリに於ける上陸作戦』,pp.325-326,

的を射ている。さすが参謀本部で両用作戦専門をしていただけある。

British viewなのは時代が時代なためしょうがないと思うが、「土軍の将帥および軍隊は比較的精鋭なり」とオスマン軍に対しても一定の評価がある。英豪の公刊戦史を参照し、ハミルトンの報告なども吟味された真面目な研究本だと思う。精神主義的記述も全くなく、翻訳調ではなく自然で簡潔な日本語(とはいっても軍隊調ではある)。巻末に木原清中将の推薦の辞のようなものがあり、「著者が多くの原書を咀嚼し、これを著者の頭脳に溶解したる後、そのエキスのみを抽出し、煩を避け要を摘み事実の総合分析その当を得たること」と言っている。まさにその通り。きちんと読んだら書評書きたいぐらい。



続いて欧州大戦終結直後の参謀本部編『ダーダネルスに対する英仏軍の作戦』では…

作戦失敗の主因
1.政略上の見地のみより打算し確算なく作戦を開始せしこと
2.統帥権確立せざりしこと
3.平時諜報勤務の不十分なること
4.海軍の独力攻撃はオスマン軍に準備の日にちを与えたるに等しく、爾後の作戦を却って困難ならしめたり
5.運搬船の配船搭載法不適当なりしこと
6.上陸地の選定不適当なりしこと
7.高級指揮官の能力欠乏せしこと
8.兵力を逐次増加せしこと
9.天候季節の影響

としている。

「統帥権確立せざりしこと」って…
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