ミリタリー | 趣味・実用 | 感想 2015.10.24 (土)
鈴木伸元『反骨の知将 帝国陸軍少将・小沼治夫』平凡社、2015年。


日本陸軍の著述家といえばだれを思い浮かべるでしょうか。

まず挙がるのが石原莞爾でしょう。ついで『戦争要論』の村上啓作、『『戦争史概観』の四手井綱正。通なら石田保政を知っているかもしれません。

今日、軍事著作家としての小沼治夫は全く知られていません。あくまで軍内での研究にとどまり公刊されなかったからでしょう。しかしながら、健全な批判精神に基づいた「日露戦争に観る戦闘の実相(日本軍の能力特性観察)」や、火力戦を訴えたことで有名な「ノモンハン事件研究報告」を書いた、知る人ぞ知る人です。
※上の二書はアジア歴史資料センターというサイトで見ることができます。
「日露戦争に観る戦闘の実相 (日本軍の能力特性観察)」 レファレンスコード C13110412900
「ノモンハン事件研究報告」 レファレンスコード C13010625400



このようなマイナーな軍人の伝記が、新書という読みやすい形で出ました。

わたしが小沼治夫を知ったのは、白井明雄氏の著作からです。鈴木伸元氏の情報源もほとんど白井明雄氏をもとにしているようです。本の流れも白井明雄「陸軍少将小沼治夫」と同じですね。ただ鈴木伸元氏のほうが小沼治夫の私生活に詳しいです。

教官時代の著作。日中戦争、ガダルカナル戦、ルソン島戦での参謀勤務。とくにルソン島戦では、参謀副長として実質作戦指導を行っていたりして、著作と実戦の相違を見るにとても興味深い人物です。軍事思想なのか空想なのか判別がつかない石原莞爾よりもよっぽど“地に足の着いた”調べるに値する人だと個人的に思っています。

残念ながら今回の伝記は短期間で書かれたと思われる点、著者が軍事史に明るくないと思われる点があり、少し雑な印象を受けます。しかしながら今回の刊行を契機として小沼治夫の研究がもっと進むことを期待したいです。