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ミリタリー | 趣味・実用 | 中東戦線 2014.10.26 (日)
1917年、オスマン帝国ではあらたな構想がもちあがりつつあった。バグダードが陥落したあと、エンヴェルはバグダード奪還の考えにとりつかれていた。かれはオスマン・ドイツ連合の電撃軍集団を編成してこれを達成せんと意図していた。

電撃軍集団はトルコ語でYıldırım Ordular Grubuといい、英語ではYildirim Army GroupあるいはThunderbolt Army Groupと訳される。Yıldırımをそのままとしてユルドゥルム軍集団と訳してもいいが、筆者の好みで電撃軍集団とする。ドイツ側は、F軍集団とも呼んでいる。ほかに稲妻軍団と訳しているものがあるが、軍集団と軍団という部隊単位をまちがえている。定訳がないので、定訳ができればそれにしたがいたい。なお、イギリス公刊戦史はバヤズィト1世のあだ名にあやかったものだとしているが、トルコ側の記録に記述がないのでよくわからない。2014年にトルコ軍は「ユルドゥルム動員演習」というのをやっていたりするので案外語呂がいいだけなのかもしれない。

この電撃軍集団がメソポタミア上流、おそらくモースルに集中し、バグダードをとりかえすべく大攻勢をかけるのである。あわよくば、メソポタミア下流の奪還かペルシャ進攻もおこなう心づもりであった。エンヴェル流の雄大なセンスがまたにじみでている。エンヴェルの構想を進めよう。電撃軍集団は、ドイツの援助を得て、2つの軍から構成されることになる。ひとつはハリルの第6軍で、もともとメソポタミア担当の部隊である。もうひとつはあらたに結成される第7軍である。第7軍の兵士はガリツィア、ルーマニア、マケドニアに派遣されていた部隊からなる。これら百戦錬磨の諸師団は、オスマン帝国さいごの戦略予備である。かれらに替えはない。1917年夏、カフカース、パレスチナ、メソポタミアの戦場はいずれも膠着状態となっていた。この小康を利用し、エンヴェルはすくなくとも一つの戦域で主導権をとりかえすつもりでいた。

1917年6月、パレスチナに視察にきたエンヴェルはジェマルと会い、バグダードをとりかえすべく攻勢をかんがえており、あたらしい軍集団を編成するつもりであると語った。そして、この部隊に編入された師団はエーリヒ・フォン・ファルケンハインが指揮することになるだろうとも。

6月24日、エンヴェルはこの計画を議論すべくアレッポに会議を招集した。出席者は以下のとおり。

カフカース軍集団司令官アフメト・イッゼト・パシャ
第2軍司令官ムスタファ・ケマル・パシャ
第4軍司令官ジェマル・パシャ
第6軍司令官ハリル・パシャ
オスマン参謀本部員ブロンザード・フォン・シェレンドルフ

ほかに、参謀本部とカフカース軍集団の参謀将校、第3軍と第4軍の参謀長もいた。

エンヴェルは、ヨーロッパ作戦終了によって利用可能となる諸師団をユーフラテス上流をうつし第7軍を結成する計画を明かした。かれの説明するところによれば、ハリルの第6軍はチグリス川に沿い南に攻勢をかける、第7軍はユーフラテス川に沿い東に攻勢をかける、そうすればバグダードにいるイギリス軍ははさみうちにされて壊滅するだろうということだった。

ジェマル・パシャはこれがいい案であるとは思わず、見直しをせまった。ジェマルは、バグダード奪還をねらうよりもアレッポ付近に数すくない精鋭師団を集中しておくべきだと感じていた。戦略予備としてアレッポに置いておけば、カフカース、パレスチナ、メソポタミアいずれにも対応可能である。かれはまた、内陸部への上陸作戦にそなえる保険としてアダナに部隊を集中する案も述べた。バグダードに対し一か八かの攻勢をかけることはオスマン帝国にとって危険であると語り、戦略状況のかれの概要を結論づけた。いったん消耗してしまえば、このさいごの戦略予備は再建不可能なのである。

対してエンヴェルはこう返答した、参謀本部はすでにこの行動方針を決定しており、これのために"ドイツ最高の将軍"をすでに任命した。ドイツは6コ歩兵大隊と大量の機関銃よりなる軽師団も提供してくれると。

イッゼト・パシャも同様に計画に不安を感じており、アレッポに1コ師団をのこし不測の事態に対処する予備部隊として運用するようエンヴェルに勧めた。しかし、かれも懇願もまた無視された。これ以後、カフカース・パレスチナ・メソポタミア戦域すべての努力優先が、電撃軍集団の活動にむかっていくこととなる。



Ordered to Die: A History of the Ottoman Army in the First World War (Contributions in Military Studies)Ordered to Die: A History of the Ottoman Army in the First World War (Contributions in Military Studies)
(2000/11/30)
Edward J. Erickson

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