ミリタリー | 趣味・実用 | 軍事用語 2016.01.30 (土)
「作戦戦略」を陸自内に広めたの浅野祐吾なんですね。木村友彦「陸上自衛隊創設以来の用兵思想の史的考察」に載ってました。

浅野は

「やむを得ず戦争を未然に抑止し得ない場合、最小限に戦争の拡大を抑止し、あるいは積極的に幾多の戦争を組織し、戦争目的達成にもってゆくかという技術」(浅野祐吾『現代兵学体系論』p148)

を作戦戦略だと言っており、

「戦闘目的に答えるために行われたものが戦術であり、政治目的に答えるために行われたものが戦略である。戦略と戦術とは、目的と手段との関係にあるので戦闘の規模ではなくて、戦闘の効果のいかんによって物理的な破壊を期待するものは戦術で、戦争の解決が期待されるならば戦略と言えよう」

と述べる。この上で

「戦術は戦闘目的達成のための行動の技術であり、現代では、戦争目的達成のためには直接的な効果を一般には期待することができないであるが、その戦術行動が、戦略的意義のある場合がないわけではない。特に大部隊の戦術行動にはその公算が少なくない。このゆえに作戦術をもって作戦戦略とも言われる」
※この作戦術は、今日でいう作戦術とニュアンスがちょっと違うと思われる。

と書く。つまり浅野は、戦略と戦術を目的と手段の関係と見なし、今日大部隊の戦闘が戦略上影響を可能性が少なくないとして「作戦戦略」と当てている。何かに似ていませんか?

しかしながら昭和62年版用語集では「作戦目的を達成するため、大部隊を運用する方策を『作戦戦略』という」と微妙な定義をしています。平成20年版統合用語集では、作戦戦略を「戦争目的を達成するため、高次の観点から大規模に作戦部隊を運用する方策をいう」とやや修正されています。



創成期陸自では酒井鎬次などのフランス兵学に影響を受けた西浦進や浅野祐吾がいて、こいつらそっちのけにして米軍式と旧軍式の争いがあったの興味深いですね。作戦要務令の復活みたいな昭和43年版野外令以降、旧軍式閥は数を減らしてテクノロジー優勢になると。

フランス兵学とは断絶した存在(?)ののちの前原透氏や片岡徹也氏も異端と言うか…

ミリタリー | 趣味・実用 | 軍事用語 2015.07.12 (日)
改めて記事にしておく。



"状況開始"があたかも"作戦開始"と同じような意味でつかわれる誤用が創作で蔓延しています。"状況開始"で検索すると、誤用だとすでに指摘されていたりします。自衛隊の用語集でもはっきりと演習で使われる用語だと明言しています。

状況開始 Start of Exercise
演習において、状況の付与又は現示による状況下の実演を開始することをいう。

状況終了 Termination of Exercise
演習において、状況の付与又は現示による状況下の実演を終了することをいう。

統合幕僚監部, 統合用語集. (2008), 48.


状況開始に実戦時の意味も含めると日本語としてもおかしくなると思うので誤用が収まったらいいなと。アニメ・マンガで使われる"状況開始"にあんまり思い入れなかったりします、はい。



わたしの見るかぎり、某国防関係者の方々が積極的に誤用だと言ってないと思えたので、あまり使われてない語かと思ったらそうでもないようです。









統合幕僚監部, 統合用語集. 2008.
防衛用語辞典
ミリタリー | 趣味・実用 | 軍事用語 2011.03.16 (水)
Wikipediaの[戦闘]のノートをふとみているうちに疑問がわいてきたので。会戦と戦闘について。



昭和期の日本陸軍は会戦と戦闘をこう定義している。

会戦:
敵を圧倒殲滅する目的をもって、通常軍以上の大兵団をもって行う戦闘およびこれが前後における行動を総称す。

戦闘:
戦争の目的を達するため採るべき直接手段にして、現に鉄砲を使用し鋒刄を交うるをいう。

『兵語の解説』



一方自衛隊では戦闘をこう定義している。

戦闘(battle、combat):
作戦の個々の場面において、戦闘力を行使する行為及びその状態をいう。

『防衛用語辞典』,p.243

1968年版、陸上幕僚監部『用語集』でも同じなので、ずいぶん昔から変わっていないよう。おそらくこの下位概念として「交戦」があるのではないと思う。



米国防総省の2009年版軍事用語集にはbattleもcombatもenagagementもなし。
David ZabeckiはThe German 1918 Offensivesで簡潔に、

Battle:
A series of related tactical engagements.

としている。



わたしは個々の戦闘が組み合わさって会戦となると理解している。これは『軍事の事典』に影響を受けてのこと。該当項を読み直すとschlacht(battle)を会戦にあてている。そしてP31の表に「現代ドイツ軍の会戦の位置づけ」を紹介している。

戦争(Krieg)

作戦(Operation)、会戦(Schlacht)

複戦闘(Gefecht)

単戦闘(Kampf)



ちょっと考えなおすと、旧軍の会戦の語はガウガメラやザマや関ヶ原のような戦いを想定し、連続的な作戦を想定としていない気がしてきた。ゆえに自衛隊は会戦の語を放棄したのかもしれない(もしくは米軍型の軍隊に変わったため用語も変わったと見るべきか?)。「決戦」ってのは自衛隊にもあるが別次元の話なんだろうか。米軍用語にもdecisive battleはないが、decisive engagementはある。

う~ん、現代戦に関しては戦闘(~の戦い)と交戦のほうがいいかな。



米軍教範の「作戦」ってやつも持っていたほうがいいのかなと思い始めた。

ミリタリー | 趣味・実用 | 軍事用語 2010.12.04 (土)
西浦進によると、「戦略」という語の各学者の定義を大別すると2つに分けられる。

1.政治の決定する政略目的を達成するために、戦術的効果をこれに適合させる方策。
2.戦術に対して、場面の大小、広狭、遠近などにより、戦略という言葉を用いている。
(『兵学入門』p.155)

1.は目的別で、2.は範囲が広いか狭いかである。

これに対応して考えてみるとエド・エリクソン博士はこう分けていると思われる。

戦略→戦争全体。軍、軍集団以上のレベル。
作戦術→戦役。軍団、軍のレベル。
戦術→会戦。師団以下のレベル。

自分で書いたWikiPの[メギッドの戦い]より少し考えてみる。

「士気以外に3つの点をエドワード・エリクソンは指摘している。
戦略的観点では戦場がカフカスやガリポリのように守りやすい土地ではないこと、作戦レベルではイギリス軍が欺瞞と集中によって前線付近での軍団規模の部隊の移動を可能にしたこと、戦術レベルでは1917年から1918年の間にイギリス軍がその戦術を進化させていたことである」

なんとなしにこれを書いたが、これは範囲が広いか狭いかでわけた分析である。当時は目的別じゃないよなと疑問に思っていた。

ミリタリー | 趣味・実用 | 軍事用語 2010.11.27 (土)
遮掩(しゃえん) screen:
部隊の主力のために、早期警戒及び射撃統制手段を提供し、反撃部隊を誘導し、遮掩部隊を能力内での敵部隊の撃破及び撃退を図るために、監視を継続する警戒任務をいう。(NATO・米軍用語)

screenってこういう訳があったのか。騎兵幕しか思いつかんかった。